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  • 2015.09.30 Wednesday
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【その6】第一部 作村裕介木版画展「生活」トークショー 




 齋藤:ここに資料があるんですけど。僕は全然日本の版画の歴史とかに対して無知だったんですけど、作村が今回木版画の展示をやるってことで色々調べたんです。さっき作村が小学生の版画みたいだと言われたって話があったけど、小学校で木版画を彫った経験のある人って結構いると思うんですよ。でもみんなが木版画を刷った経験をあるっていうのは、一体なんでだろうなって思って。それで木版画と一般民衆の関係みたいなことを、ちょっと突っ込んで調べてみようと思ったんですよ。こないだまで東京国立近代美術館で「実験場1950s」(※11)っていういい展覧会やってたじゃないですか。




「実験場1950s」(※11)

→ ※11 東京国立近代美術館 60周年記念特別展

「美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年」

第2部 実験場1950s

会場:東京国立近代美術館

会期:2012年10月16日〜2013年1月14日

http://www.momat.go.jp/Honkan/Art_Will_Thrill_You.html#detail





作村:わかんないっす(笑)。


齋藤:やってたんですよ。「実験場1950s」では、だいたい日本が原爆を落っことされた1945年から、60年代のネオダダとかの前衛芸術運動が生まれてくる直前ぐらいまでの時期が取り上げられていて。この資料は会場で配布されてたんだけど、すげー充実してる。この中の3枚目に「記録・運動体」っていう項目があります。

1950年前後に民衆の中に深く浸透していった日常生活を記録する運動。その起爆剤となったのが無着成恭が編集した中学生の作文集『山びこ学校――山形県山元村中学校生徒の生活記録』の刊行であった(1951年)。」。

『山びこ学校』は岩波文庫でも出ているんだけど。「またたく間に生活綴方運動が教育の現場に浸透し」。生活綴方運動は生活の色んな機微を児童に文章として記録させる教育運動ですね。大正時代に入る前後くらいから運動自体は存在していて、その児童の作品などを載せて指導していく雑誌とかも刊行されているんですけど。えっと「生活綴方運動が教育の現場に浸透し、さらには大人の綴方ともいうべき主婦や労働者を中心とした生活記録運動へと発展していった。」と。そして「版画運動」っていう小項目がここにあるんですよ。


作村:へぇー。


齋藤:「1949年、戦前のプロレタリア美術運動の流れをくむ鈴木賢二、小野忠重、上野誠、大田耕士らによって『日本版画運動協会』が発足した。」。

プロレタリアというのは一般大衆というか労働者っていう意味合いで、簡単に捉えれば。プロレタリア美術としての木版画運動は戦前からあって、中国にも魯迅とかが提唱した木刻運動っていうのがあって日中間でお互い影響し合ってたりしてる。とりあえず1950年代前後に民衆の運動を記録しようとした版画運動があったと。そういうのが「実験場1950s」にあったなと思い出して。

じゃあ民衆版画運動についてもうちょい調べてみようと思って検索してみたら、論文が出てきたの。友常勉さんっていう部落解放運動とか本居宣長についての本を出されている人が書いた、「中国木刻から版画へ――戦後日本の民衆版画運動・序説」という論文が出てきたんです(※12)。それはさっき言った日本版画運動協会などの活動について、もう少し詳しく書いているんだけど。北関東、栃木出身とかの作家たちが多く集まってて。




論文が出てきたんです(※12)

→ ※12 [PDF] 友常勉 「中国木刻から版画へ――戦後日本の民衆版画運動・序説」

http://repository.tufs.ac.jp/bitstream/10108/59883/5/acs080011_ful.pdf





平間:北関東の人たちが多かったよね。


齋藤:そうそう。当時北関東には茨城の高萩炭鉱争議(1946年)、日立争議(1949-50年)とかの、社会運動における争点が集中していたらしくて。そこに版画という手段でどう関わっていくのかを大きな問題のひとつにしていた。版画っていうのは木の板と彫刻刀があれば彫れてすぐ複製ができる、民衆が手軽にできる複製技術だったわけですよ。2009年に目黒区美術館で炭鉱をテーマにした「文化資源としての<炭鉱>展」っていう展覧会があったんですけど、そこでは北関東に限らず炭鉱の労働組合が出していた広報誌みたいなのがいっぱい展示されていて。それも表紙が木版画だったりした記憶があるんですよね。

「政治課題や啓蒙的な関心にとどまらず、北関東という農村社会と農民大衆を表現するというテーマを、内面的な責務として背負っていたとも考えられるのである。しかも、それが同時代的な政治闘争の関心に支えられていた。」。

この人たちは自分の住んでいた地元をベースにして、そこで起こった政治的な問題とかにも言及しつつ作品を展開していったというわけなんだけど。で、作村が版画に置き換えているものっていうのは、政治的な動機から生まれるものとはちょっと違っていて。まぁ言っちゃえば昭和へのノスタルジーとか消えゆく風景だったりとか、なんかそういうものに惹きつけられていると思うんですね。


作村:そう。


平間:そうだね。複製っていう感じでもないしね。


齋藤:このまま掘り下げていくと日本の共産党の歴史とかと関わってくる話になっちゃうんだよね。そこまでズケズケ話しちゃうと作村の絵と離れてきちゃうなと思って、どこまで話していいものかなぁと考えちゃったんだけど。


作村:大衆的なもので木版画が出てきたというところと、自分が大衆をモチーフにして木版画に今取り組んでいることっていうのは共通している。俺はその話もそういう運動も知らなかったけど。こういう木版画に取り組みだしたのもそういう運動とも全く無関係でやっているのにも拘わらず、自分の中でしっくりくるっつーのは、やっぱり肉体労働とか庶民の生活とかに木版画っていうもののイメージがすごい合っているんじゃないかなって、自分の中ですごい感じていて。肉体労働とかもすごい体を使うこととなんだけど、木版画って絵のイメージもそうなんだけど、版画を彫るっていう作業自体の肉体的な痕跡みたいなものが木版画の絵から出てるんじゃないかな。それは他のアクリル絵の具とか油絵の具とかそういうものよりかは、一番出ているんじゃないかなっつーのはあって。


齋藤:そうだね。版画運動の歴史とかこの論文とか読むと、運動的なものに傾斜していくタイプの人と、象徴化された「郷土」を自分たちの生きる姿として定着させようとしていく人とで、結構論議があったりしたみたいだけど。

有名な「押仁太(おすにた)」っていうグループがあって。これは1950年くらいで、大山茂雄・鈴木賢二・新居広治・滝平二郎の頭文字を取って「おすにた」って読むんだけど。鈴木賢二は戦前から民衆版画運動に関わり続けていて、団体の指導者的な役割を担っていた。滝平二郎は切り絵でのちのち有名になって。『モチモチの木』の挿絵を描いている人。そういうイラストレーション的な流れも含まれてくるし、その文脈で言うなら作村のアクリル画やスケッチにまで遡るとベン・シャーンとか木村荘八とか色々読み解こうとしたら面白いことはいっぱいあるんだけど。


会場(高橋辰夫):割込み失礼(笑)。僕も作村さんとは違うけど、日雇いでよく働きました。そういうところでよく思ったのは、労働者の人たちは政治的には保守の人が多いってことです。夢持っていつか俺も金持ちになりたいっていう成功欲求があって。でも、共産主義や社会主義の人には実はインテリが多くて、労働者と立場的に相容れないものがあるんですよね。彼らは労働者の側に立って世の中を良くしたい、君たちは金持ちから搾取されているから助けてあげたいって考えてる筈なのに、距離ができてしまう。本当は搾取する側である資本家の方が金や夢をくれるから、実際の労働者が加担しちゃうっていう皮肉を感じました。でも、そうやって理念から入っていくのではなくて、版画や創ることから現場に入っていく方が可能性があるのかなと。

身体性から労働者の側に入っていくと、共産主義機関誌の表紙に版画が出てきたりするのかなって(笑)。もちろん、作村くんがやっているのはあくまで労働現場に則したものを作品として見せたいのであって、政治的主張を込めたいわけでもないとは思うんだけど。


作村:全く考えたことがないですね。


会場(高橋辰夫):そうですよね。でも、結果的に出来上がったものが、労働運動なりのビジュアルと似てきているというところに可能性を感じるんです。


齋藤:それで思ったのが松本竣介なんだけど。これは松本竣介の、この前世田谷美術館でやっていた生誕100年の展覧会(※13)のカタログなんですけど。これすげーいいカタログなんですよ。



生誕100年の展覧会(※13)

→ ※13 「生誕100年松本竣介展」

会場:世田谷美術館

会期:2012年11月23日〜2013年1月14日

http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/sp_detail.php?id=sp00161




平間:いいカタログ。


齋藤:松本竣介は自分含め家族が新興宗教に傾倒してたりしたけど、政治運動とかにはそんなには熱心じゃなかったのかな。《立てる像》とかが有名だけど、僕は展覧会を見て風景の絵がすごい好きだった。同じ風景をすごい何回も描いているんだよね(※14)。それぞれタッチもかなり違っていて。作村は同じ風景を何回もスケッチを描いたりして、それを木版画に直す作業をしているわけだけど、結構ひとつの行き着く先のものが出来たら、それに至るまでのラフのスケッチとかにはあんまり価値を置いてないみたいな話を前にしたじゃない。松本竣介もラフみたいなのはいっぱいあるんだけど、同じ風景も何回も描いていて。空襲で焼けちゃった神田の焼け野原を赤茶色の絵の具で描いてる。油絵の具とかが統制される前に、壺に油絵の具を入れて地中に埋めて隠しておいて、ちょっとずつ掘り出しながら描いていた。そういう消えゆく風景というか、作村のグッとくるというのとはちょっと違うチャンネルなのかもしれないけど、この風景はどうしても絵として定着しておかなければいけないっていう衝動がすごい伝わってきたんだよね。ちょっと抽象的な言い方になっちゃうけど。この展覧会見たときにすごい作村のこと思い出した。





同じ風景をすごい何回も描いている(※14)

http://search.artmuseums.go.jp/gazou.php?id=5305&edaban=1(松本竣介作品)

松本竣介《Y市の橋》1946






平間:(笑)。良かったね。さっきの一番成功した一点とそれまでに作りつづけた数点の失敗作という話で、それは作村からしてみれば失敗作だから捨てちゃうという方向に行くんだけど。齋藤くんが作品を作る場合は成功と失敗が結構同じぐらいの価値を持ってて。全部展示ができるみたいな。そういうのは全然違うと思った、この二人が。齋藤くんは基本全部成功みたいな。


齋藤:全部成功っていうかこれはあんまりだなっていうのはあるけど。これはこの作品のラフ的な位置にあるから違うなっていうのはない。


平間:自分の中の作品カーストみたいなのがない(笑)。


会場:(笑)。


齋藤:作品カースト(笑)。それはない。


平間:でも作村の場合は割りとあって、一個成功したら他は捨てるぐらいの勢いがあるんでしょう。


作村:それは下描きってこと?


平間:そういうこと。その下描きって考え方自体を持ってないよね、齋藤は。


齋藤:持ってない。


平間:下描きと本番が完全に分離しているんだよね。


作村:そうだね。木版画の場合はそうだね。これは木版画にしようとして描いてる。スケッチでは絶対できんからっていうのは思っとって。家に持ち帰ってしなきゃ木版画はできんじゃん。だからなるべく木版画のスケッチは、さっきは捨てるって言ったんだけど。情報を極限に少なくした状態のスケッチをして持ち帰るとか。元々僕がスケッチをし始めたきっかけっつーのが、大竹伸朗の情熱大陸を見てなんですけど(※15)。



大竹伸朗の情熱大陸(※15)

→ ※15 2007年09月09日放送

http://www.mbs.jp/jounetsu/2007/09_09.shtml




平間:結構最近(笑)。


会場:(笑)。テレビっ子だなぁ。


作村:それが筆ペンでやってて、あっ俺もこれだなぁって思って。元々、コンセプトありきの作品が嫌になってて。大竹伸朗のスケッチって作品としての発表はあんまりしてないじゃないですか。


齋藤:してないのもあるね。


作村:絵を描くことを楽しんでスケッチをしているみたいなところが、画家ってやっぱりこういうことなんだなって。自分の必要としていない所っていうか、自分の作品とは無関係な所でスケッチをするっていうのが、絵を描く衝動とかそういうところに結びついとるなぁと思って。やっぱり俺もただ単純にグッときたところを描こうって思って始めたところだから。そういうところがすごい影響を受けてる。



【その7につづく】





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